人は1日に約1万リットル(500㎖入りのペットボトル2万本)分の空気を吸い、同じ量を吐き出します。
この動作を鼻でするか、口でするか。同じようですが、その意味は全く違います。
鼻呼吸には、ウイルスを防ぐさまざまな関門が伴うからです。
第1の関門は鼻毛。
まずここで、ウイルスを含むやや大きめのほこりなどがブロックされます。
第2は、鼻の中の粘膜から出る粘液です。
ウイルスがこのネバネバにからめ捕られると、鼻から喉の奥にかけて生えた無数の線毛がベルトコンベアーのように動き、痰(たん)などで体外に排出されたり、胃に運ばれて胃酸で無害化されたりします。
第3は、どんなに乾いた冷たい空気を吸い込んでも、鼻の中に縦横無尽に張り巡らされた毛細血管によって、喉の奥では体温近くまで温度が上昇し、湿度も80~85%に。
このため、乾燥に強く湿気に弱いウイルスの生存率が低下します。
副鼻腔(びくう)で作り出され、殺菌作用などがある一酸化窒素の働きも、鼻呼吸すればこその効果です。
口呼吸では、そうした鼻が持つ防御機能は発揮されません。
ウイルスの数も減らず、乾燥した冷たい空気が直接のどの奥へ取り込まれると、線毛の動きも弱まって排出機能は下がり、ウイルスの侵入は容易になります。
新型ウイルスの特徴はまだ分からないことが多いです。
日本感染症学会は現時点で、仮に感染したとしてもその多くは軽症~中等症の上気道(鼻から喉頭まで)の感染症で終わるとみて「このような症例に対してはインフルエンザ、風邪に準じた対応になる」との見解を示しています。
免疫力アップには、まず空気や食の取り入れ口を良好な状態に保つことが、健康づくりの大前提です。鼻呼吸こそ天然のマスク。
口を病の入り口にしないよう、誰でもいつでもできる予防法で免疫力を保ちましょう。
「西日本新聞より抜粋」